『フェス』と聞くと何を思いだすだろか?
ロッキンや、サマソニのようなロックバンドが野外で音楽をかき鳴らす姿を想像する人が多いかもしれない。
「この画像がフェスだ!!!!!」
と見せられても誰も信じられないだろう。
今回僕が行ってきたのはうんころフェスという名前のイベントだ。想像している『フェス』とはかなりかけ離れていると思う。お遊戯会という言葉の方がピンと来るかもしれない。
このフェスのテーマは音楽と笑いと癒しであり、おそらく世界初であろう人とパペットによる音楽フェスとなっている。
実際に見てきた感想を言うと、小さい頃に見ていた『ざわざわ森のがんこちゃん』や『ひょっこりひょうたん島』を思い出すようなノスタルジックな気持ちになれる時間だった。
ただし子ども向けの話しが中心というわけではなく、メタ的な発言が随所にあり、カワイイキャラクターが、
「バミりはそこだよ」
「コンプライアンスが悪いんだ!!」
といった現実と虚構があやふやすぎるキワドい発言を当たり前のようする。そのギャップに笑ってしまう。
人形が動いているだけでなぜあんなに頬が緩んでしまうのだろうか。
良いイベントだったのだけど見終わったあとに「一体何を見ていたんだろう」という気持ちにもなった。何も内容がなかったイベントとも言える。
ただ、今の罵詈雑言が飛びかうSNSの時代とは隔絶された良い意味で『何もない世界』があそこにはあった。意味なんてなくても良いのかもしれない。
「現代人は癒やしの時間がない」というのは良く聞くが、うんころフェスには癒やししかなかった。癒やしという概念は全部うんころフェスに吸収されたのかもしれない。
フェス…そもそもフェスって一体なんなんだろうか。今回うんころフェスに行ってみてそれが僕の中でよくわからなくなってきた。
あと一日でこんなに『うんこ』って単語を大人の口から聞くのも、今後の人生でなかなかないだろうなと思った。
うんころフェスに行ってみた
会場は原宿の竹下通りの路地を一本抜けたところにある原宿ストロボカフェだ。通りにあるこの看板を見ながらカップルが、
「うんこだって!
なにこれ?なんなの?なんのイベントなの?なんなの?」
と「なんなの」という言葉がゲシュタルト崩壊しそうな会話していた。
ただ、これが正常な反応なのだと思う。「よっしゃ!うんこのフェス行くぜ!!」と意気揚々と行く人の方がおかしいのだ。
ストロボカフェに入ってみるとかなりの満席で驚いた。うんこってそんなに人気あるのか。知らなかった。なによりも女性が多いのだ。うんこって女性に人気あるのか。今度プレゼントしてみようと思った。
そもそも『うんころフェス』は誰が出ているのか
そもそも今回のフェスでは、うんころもちというキャラクターが中心となって開催されている。そこにザ・ぷー(旧名:ザ・プーチンズ)というグループが参加している形だ。
『うんころもち』は漫画家/イラストレーターであるえちがわのりゆきさんが考えたキャラクターである。他にも人気作である『ほわころちゃん』などもえちがわさんの作品だ。
そのキャラクターと一緒にうんころもち劇団として様々な楽曲も発表しているので、今日のフェスを開催することになったようだ。
参加しているザ・ぷーというグループは、
- 作詞作曲を担当する街角マチオ
- テルミンという電子楽器を演奏する街角マチコ
- 猿(人形)である川島さる太郎
- 音楽・映像プロデュース・ライブ演出を担当する演出家のSONE太郎
という4人組のグループだ。
僕は何度かライブに行ったことがあるのだが、とにかくなんでもありで、ライブなのかコントなのかわからないパフォーマンスをするのが特徴的だ。シュールすぎる世界観にハマる人がいるとかいないとか。
途中から気づいた人もいるかもしれないが、フェスと謳ってはいるが実質出ているのは2グループだけなのである。フェスでなくただの対バンとも言える。しかし、そこはツッコんではいけない。
なぜならこのあとツッコミたいことが山ほど起きるからだ。
いきなり『うんこ』を全員で叫ぶ
ライブが始まるとまずはザ・ぷーの川島さる太郎が登場した。よくよく考えると、うんこが主催のフェスにサルがでてくるって、ちょっとしたさるかに合戦の同窓会だ。
川島さる太郎は登場するやいなや、
「今日はEテレを見ているような気持ちで見てね」
と言い放った。「ここは日常世界の延長だと思っちゃいけないんだ」と早くも確信した。ディ◯ニーランドと同じ仕組みだ。夢の世界だ。楽しもう。
ちなみに川島さる太郎の後ろに街角マチコさんの姿が見えるかもしれないが、これはザ・ぷーのいつも通りのことなので決して気にしてはいけない。彼らはべつべつの生命なのである。
この会場では大概のことは『気にしない』ということが最大の楽しむポイントなのである。お客さんも一緒にイベントの空気を作っていくのだ。
「日本一ポップな原宿という街で、日本一ポップな言葉を叫ぶよ」という言葉とともに会場の全員で、
「うんころもちーーー!!!!」
と叫ぶ。五度ほど叫んだところで、ようやくうんころもちが登場した。
大都会のド真ん中でこんなに大声で「うんこ」ってワードを叫ぶときがくるとは思わなかった。10代の自分にそんな日が来ることを教えてあげたい。
うんころもちは『うんこかモチなのかわからない』ということがコンセプトのキャラクターである。形的に絶対うんこだと思うけど、うんこではないらしい。
ちなみにこの二人は、
「うんころもちが紅白で嵐や三代目 J Soul Brothersのドラムを担当していた」
というパペットがするとは思えないような、大嘘で内容のない会話をずっとしていた。
うんころもち劇団の癒やしの演奏タイム
まずはうんころもち劇団の演奏からだ。うんころもちの作者であるえちがわのりゆきさんが登場した。
『うんころもち』といううんこを題材にしたキャラクターを作ってる人だからどんな頭のおかしいマッド野郎かと思っていたが、物腰の柔らかいゆったりと話す好青年のような人で驚いた。
えちがわのりゆきさんが「今日は家にいる感じでリラックスして楽しんでください」という風に言ったとおり、会場には緊張感がまったくなく、家でテレビを見ているような空気が流れていた。良い意味で会場の空気がゆるかった。うんこだけに。
この会場の空気感やうんころもちというキャラクターは、えちがわのりゆきさんの雰囲気があるからこそ出来るものなんだろうなと思った。類は友を呼ぶというやつだ。
(ただし小説などでは、逆にこういう優しそうな人が一番ヤバイ人なパターンもあるから油断はできない)
まずは『ゴーゴーうんころもち』という曲から。
チャック・ベリーの『ジョニー・B.グッド』のような古き良きロックを思わせるギターリフで音がカッコイイのだが、そこにうんころもちの高い声の合いの手が入りアンバランスでおもしろい。
小さい頃にNHKの『みんなのうた』で聴いてた曲って、こういう変なやつ多かったよなーと懐かしい気持ちになる。
というかうんころもちが異常にカワイイ…
なにこのコミカルな動き。家に持って帰りたい。ずっと見てたい。
ちなみに横で浮いてるのは『けだまちゃん』というキャラクターで、『動物が吐いた毛玉』がうんころもちの友達になったという設定だ。設定が急に雑すぎる…!!
えちがわのりゆきさんは、うんころもちの他にも『ほわころくらぶ』という漫画も出しており、その中のキャラクターである『ほわころちゃん』も登場した。
ほわころちゃんが登場すると、「カワイイ〜」と声が会場から漏れ、一斉に写真を撮りだした。(このライブは写真を好きに撮って良い)
やっぱりカワイイうんこよりもカワイイ動物の方が人気があるようだ。うんこよ、これが現実だ。
「今日の登場するグループはどっちもエッジがきいてるから、お客さんは疲れちゃうかもね」
「ことあと登場するザ・ぷーのために会場をもっと温めた方がいいんじゃない?」
と急に現実的なことをうんころもちは言い出すので、見た目とのギャップに笑ってしまう。この日のライブを通じてうんころもちの魅力にどんどんとハマっていく。うんこにハマっていくってなんか語感が嫌だなぁ…
ザ・ぷーが登場するがほとんどの時間を人形劇に使う
うんころもち劇団の次はザ・ぷーが登場した。
「今日は精神年齢を5歳くらいにして見てくださいね」
と街角マチオさんが発言したが、会場にいる人たちはとっくに精神年齢が3歳になっていたので準備万端である。
ザ・ぷーと言えばテルミンを街角マチコさんが弾く日本ではかなり珍しいグループである。
この日はテルミンで何を演奏するかと思ったが、永六輔が作詞した『遠くへ行きたい』が演奏された。なんでその曲?と会場全員が思った。
一瞬にしてお客さんを置き去りにするこのスタイルこそがザ・ぷーの魅力なのだ。
ちなみにこの二人のやり取りも子ども番組っぽくかなり大げさな相槌をうったり、アメリカの通販番組のような驚き方をしていた。
ただ話している内容が、
「おともだちのみんなも、グローバルな人材になりたいよね?」
という怪しい誘い文句だったりする。
曲が終わると再びうんころもちが登場したが、なにやら悩みがあるようでザ・プーにそれを打ち明けだした。
その悩みが、
「コンプライアンスによって、ラインスタンプの名前が『うんころもち』ではなく『ほいっぷくん』になっている」
というなんとも生々しい内容のものだった。
(ほいっぷくん! - LINE スタンプ | LINE STORE)
ちなみにザ・ぷーも改名前はザ・プーチンズというグループ名で、なにかあるごとに「コンプライアン的にまずくないですか?」と言われていたらしい。(本当かどうかは定かでない)
うんころもち
「コンプライアンスってなんなの?」
街角マチオ
「あいつは化け物だ」
うんころもち
「ひぇー怖いよ」
マチオ
「大丈夫だ、僕がコンプライアンスを取り締まっている島まで行って、話をつけてきてやる」
うんこかきびだんごかわからない『きびうんこ』を渡された街角マチオは、コンプライアンスを取り締まっている鬼瓦社長に話をつけにいく旅に出ることになったのだ。
急展開すぎて着いていけないと思うが安心して欲しい。会場にいた全員がそうだったんだから。誰もついてこれてないから。
あとこの人形劇は非常に長くて、フェスの3分の1くらいを締めている。フェスってなんだっけ?
途中で犬や猿、キジと出会いながら、いよいよ鬼瓦社長の本拠地に侵入する。もうわかってると思うが、完全に桃太郎のパロディである。
そしてフェスに来ていたはずなのに、気づいたら人形劇を見ていたという謎の状況である。冒頭で「Eテレを見ている気持ちで見ていてください」という言葉はこういうことだったのか…!!
冒頭で言ったようにメタ発言も多くて大人でも笑えるのだが、近くにいた子どもも大爆笑していた。人形劇自体がおもしろいのもあるが、『うんこ』ってワードの力は強い。
島までたどり着くと鬼瓦社長が登場した。言うまでもなく、えちがわのりゆきさんである。そして、横にいるのはえちがわのりゆきさんのリアルな本物の兄である。なんで?
しかし鬼瓦社長との話し合いは続くものの、なかなか決着は着かなかった。鬼瓦社長は一切自分の信念を曲げず譲らないのだ。
うんころもち
「公園から土管はなくなっているじゃないか?それと同じで『うんこ』って言葉も誰もそのうち言わなくなるかも知れないんだよ?なにが大事なのかわからないんだよ」
という風な、なんとなく良い話をうんころもちがし始めて、なんとなく良い人形劇になってきた。あくまで『なんとなく』である。
そしてラストに、お客さん全員で真っ暗な会場をスマホのライトで照らして、それを夜空に見立て、
街角マチオ
「あの星にコンプライアンスは必要ですか?
あの星が自主規制をしたら夜空はどうなるんですか?」
という名言(?)で鬼瓦社長はついに改心することになった。
そして鬼瓦社長は会社を辞めて、ほんわかしたベンチャーを立ち上げ、えちがわのりゆきとなり、ふわころちゃんが生まれた…というめちゃくちゃな話しで終劇した。
生々しい話しから、急に人形劇が始まり、見ているうちになんとなく「いい話だ」と思えてしまった。不思議。
ただ家に帰ってきて冷静に考えてみると、まったく中身はない内容だったなと思った。ガムをずっと噛んでいて急に味がしなくなったような感覚だ。あの空間の空気感に騙されていた。
うんこ曲の三連続で終幕
そしてラストはザ・ぷーがこの日のために描き下ろした 『うんころ理論』を歌った。
小学4年生を強く意識して作ったらしく「アインシュタインもニュートンもパパもママもうんこする」というような、なんともザ・ぷーらしい気の抜ける歌だった。
続いて『古墳のうた』を披露。これにも「うーーーーーーーーーん、こふん」という風にサブリミナル的に『うんこ』という言葉が埋め込まれている。サブリミナルというか、うんこが丸見えだ。
最後はうんころ劇団の『うんころロケンロール』を全員で歌い、うんころフェスは幕を閉じた。
まさかラストにうんこに関する曲が三連続も続くと思っていなかった。まさに、うんこによるうんこのためのうんころフェスだった。
あとブログでこんなにうんこって書くと思ってなかった。
癒やしと笑いとノスタルジックに浸れるうんころフェス
「リビングにいるような感覚で見てください」
と言ってたように、まさにリラックスして見られる癒やしの時間だった。
えちがわのりゆきさんという人間性と、うんころもちというキャラクター、ザ・ぷーのような何でもありのグループだから出来るイベントだと感じた。
僕の好きな名言に画家のルノアールが言った、
「人生には嫌なことが多すぎるんだよ、これ以上に僕は嫌なものなんか作りたくないんだよ」
という言葉がある。
情報量が多すぎる現代にとってはなにも考えずにボーっと見られる、ただただ楽しいだけのものがあってもいいと思う。
よくよく思い返してみれば、感動も興奮もあそこにはなにもなかったのだけれど、癒やしと笑いの空気に満ちあふれていた。子どものときの気持ちになって見ることができて、心が浄化される時間だった。
もう一度考えたい。『フェス』とはなんだろうか?
音楽をかき鳴らすフェスもフェスだが、こういった楽しみたいお客さんの集合体をフェスと言うのではないだろうか。
楽しむのはいつだって自分であり、アーティストとお客さんが空気を一緒に作っていく場所はどこだってフェスと呼べるのかもしれない。
ということでうんころフェスの人形劇に習って、最後はなんとなく良いセリフを書いて、なんとなく良い話し風にしてこのブログも終わろうと思う。
「カッコつけた文章書いてんじゃねーよ!!」と思うかもしれないが、そこはうんころフェスに感化されたということでさらっと流して欲しい。うんこだけに。
Twitterもやっています
京都の駅近くでたまたま見つけたのが最高の醤油ラーメンだった。人生で初めて「もう一回食いたい」って食べ終わって直後に思った。第一旭って有名なお店で、行列で30分以上並んだけど行ってよかった。 pic.twitter.com/iqWg3roYGx
— megaya (@megaya0403) 2018年2月4日
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