最近アイドルの方々の記事をいくつか書かせていただいている機会もあって、ライブに行くことがある。そのときに「CDを買う」という行動をとる。
なぜ強調して書いたのか言うと、僕は27歳にして人生で初めて新品のCDを買ったからだ。(中古の100円CDなどは買ったことはあるが)
なぜ新品を買ったことがなかったのかというと、学生時代からCDは「買う」ものでなく「借りる」ものだったからだ。僕が高校生のときに実家の近くにTSUTAYAができ、CDを借りてiPadに取り込んで聴くのが当たり前だった。
学生時代のときは、借りられるものをわざわざ1000~3000円も出して買うのは、ありえない行為だと思っていた。
さらに現在は「借りる」という行為すらしなくなった。というより、実際にCDに触れることがほぼなかった。Google Playの音楽聴き放題のサービスを利用しているので、メジャーなアーティストであればすぐに聴くことができるし、Youtubeであれば有名曲はほぼ必ず公式がPVを公開している。どうしても欲しい場合はiTunesなどで購入するようにしている。
今はネット経由で音楽を聴くのが大半だと思う。僕は利用してないが、スマホで違法に音楽が聴けるサービスだって探せば山ほどあるはずだ。CDが売れなくなったと嘆かれる現状は、10代〜20代の人であれば学生時代のときに「何となくそういう流れになるだろうな」と自然と頭で理解していたように感じる。
しかし、そんな新品のCDを買ったことがなかった僕が、ここ2週間ほどで一気に10枚以上も購入した。
買うようになった理由は、アイドルのライブに行くようになったからなのだけれど、細かく分けると3つの要素があった。「音源がネットにないこと」と「経済的な余裕ができたこと」、それから「何かしたい気持ちが湧いた」というものだ。
「音源がネットにないこと」は非常に単純。地下アイドルだとネットで音楽を聴くのが非常に困難なのである。聴き放題サービスにはメジャーにならないと入らないし、Youtubeで公式が上げている楽曲も限られている。
さらに、地下アイドルはwebで検索しても情報がまとめられていない場合が多い。ライブで聴いて「いいな」と思った曲でも、調べるのが非常にむずかしい。ライブ中は曲名を言わない場合も多いし、気になった歌詞で検索しても、歌詞自体を公開していないので、検索にひっかからないのである。
そうなってしまうとそのアイドルの楽曲を知るのに一番早いのはCDだ。PCで探しても聴くことができないし、TSUTAYAでも借りれないとなると買うしかない。
ただCDというのは1枚1000~2000円ほどするので、決して安いものではない。もちろん作る側の苦労があってこの値段になるのはわかっている。ただ学生時代にアイドルのライブに行っていたとしても、気軽に2枚も3枚もCDを買えていなかったと思う。大人になった今だからこそ出来る行動だ。これが2つ目の「経済的な余裕ができたこと」である。
そして最後の「何かしたい気持ちが湧いた」というものは、ライブを見たあとだと、そのアイドルを応援したい気持ちになるからだ。
地下アイドルというのはファンとの距離が近い。握手やチェキを購入すれば長時間話すこともできるし、それじゃなくても物販に行けば普通に会話ができる場合もある。
アイドルフェスに初めて行ったときに驚いたのだけれど、フェスの会場ではステージに立っていたはずのアイドルがその辺りを普通に歩いていて、ファンと交流しているのである。それくらい身近なものなのだ。ROCK IN JAPANなどの大型フェスではありえない光景だったので驚いた。
僕は記事を書くとき以外は握手やチェキなどには行かないので、そのグループが気になったときや応援の気持ちを伝えることができない。
それならせめて、CDを買うことで少しは貢献できるんじゃないかと思った。まあ、そのアイドルを運営している会社にお金が入っているだけだから、直接貢献できているとはいい難いかもしれないが。
「このアイドルグループを応援したい。だからCDを買おう」というのは、アイドル以外のアーティストには抱かない感情だ。
僕はBUMP OF CHICKENやASIAN KUNG-FU GENERATIONなどが活躍していた世代の人間で、そのまま今でもそれらのアーティストが好きでよく聴いている。彼らのグループを好きになったときには、すでに民衆に受け入れられるメジャーな存在だった。気づいたときにはスターだったのだ。
そうなると、応援したいという感情は湧かない。すでに熱狂的なファンが多いし、アーティストと自分の距離が遠い。「応援する存在」というよりも「テレビで見る有名人」を眺めている感覚に近い。
地下アイドルのことをネットで調べてみてわかったのは、非常に危うい存在であり、いつ解散や卒業が訪れるかわからないということだ。
ケガや病気、年齢、学業、就職、他人の視線、モチベーション、罵倒、家族、運営など様々あるのかもしれない。そこには少なからずお金の問題も含まれていると思う。
そこでCD1~2枚買ったからどうなるという問題でもないかもしれないが、何もしないよりはいいのかなと思う。独身で働いている身としては、1000円から2000円なんて食費を少し我慢すれば補える金額だ。それくらいはせめて貢献したい。
結局、感情として一番大きい部分は「CDが欲しい」というだけの話なのだけれど、アイドルのライブに行かなければ僕はCDを新品で買うことは一生なかったと思う。
CD関連でおもしろい出来事があった。とあるアイドルイベントに行ったときに、あるグループのファンの人と話す機会があった。その人と話しているうちに、彼がカバンからCDを取り出して僕にくれたのである。
初めは遠慮したのだが、アイドル界隈ではこれを「配布芸」と行って、自分が好きなアイドルグループを広めるために行われることであり、特段驚くべき行動ではないらしい。CDは買うものでも、借りるものでもなく、配るために使用する人がいるという事実は目からウロコであった。
いずれにしてもその人も「アイドルのために何かしたい」がための行動であり、根本の僕の気持ちはその人に通ずるものがあるのかもしれない。
僕がやっているのはただCDを買うという行為で普通のことなのだが、それでもやはり27年の自分の人生を振り返ると特異な行動である。人間新しい場所に行くと、新しい感情が芽生えるものなのだなと思った。
CDを買うことで何か変わるわけでもないし、アイドルにその気持ちが通じているなんておこがましいことは到底思わないが、何かしらプラスに働いていれば良いなと思う。
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