megayaのブログ

自由に書いてます。エンジニア系のこともたまに。仕事でライターとエンジニアやっています

家族で釣りに行って全員でゲロを吐いた思い出

 

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小さい頃に見る父親って、強くて怖くて絶対的な存在に感じませんか?
子供は親の背中を見て育つって言いますし、僕も父は一家の先頭にいるイメージがありましたよ。

 

僕が小学4年生くらいのときに、「明日は休みだし釣りでも行くか!」と父に誘われた。

父はそこまでアウトドアな性格ではなかったのだけど、僕と兄(2つ上)のために、たまにどこかに連れてってくれていた。

 

そんな中でも父と釣りに行くのはそのときが初めてだった。
僕の地元は神奈川の端っこで海もすぐそばにあるんだけど、釣りで遊ぶことはそこまで多くはなかった。だからかなり楽しみな誘いだった。

しかもなんと今回は手漕ぎのボートを借りてくれるらしい。

さらにさらに、僕のおじいちゃんは元漁師で、おばあちゃんは昔から魚料理が大得意だ。釣った魚をおじいちゃんの家に持っていけば、絶品料理にしてくれるという特典付き。

 

こんなワクワクするイベントは久しぶりだぜ!!!

 

 

 

僕と兄は釣りに行けるということで最高潮にテンションが上がった。今からだんじり祭り始まるじゃないかってくらいテンション上がった。

父も喜ぶ僕らを見て、さぞかし微笑んでいたことだろう。

 

 

「じゃあ明日は午前中から行くからな!早く寝ろよ!」

 

 

父にそう言われた。


いくらテンション上がっていると言っても、「父の機嫌を損ねたら明日が中止になる可能性がある」と瞬時に判断した僕らは、指示におとなしく従うことにした。

 

パジャマに着替えて、歯を磨いて寝る準備を始めた。しかし、僕らとは逆になぜか父はでかける準備をしていた。
時刻は21時をすぎていてかなり遅かった。

 

 

 

「お父さん、どっか行くの?」

 

 

 

兄がそう聞くと、

 

 

 

「これから同級生とお酒呑みにいくんだよ!行ってくる!!」

 

 

 

と機嫌良さそうに家を出ていった。
僕と兄は特に何も言わずに見送った。あのテンションなら明日の釣りが中止になることはないだろう。

 

 

しかし、このときのことをあとになって僕らは後悔することになる。デロリアンがあったならあのときにバック・トゥ・ザ・フューチャーするべきだ。

そして「明日は早いんだから家にいてよ!!!」と全力で止めるべきだった。そうしておけばあの悲劇は起きなかったはずだ。

 

 

 

 

次の日。

きっちりと睡眠をとった僕と兄は、目覚まし時計の音できっちりと起床した。

いつもは「あと5分、、、」と言いがちなのだけれど、今日は完璧。遠足行く日のテンションだ。

 

 

僕らは朝御飯を食べて、釣り竿を用意して、準備を着々と進めていた。
しかし、1つだけおかしいことに気づいた。

 

 

昨日あんなに張り切っていた父の姿が見えない。

 

 

どうしたのだろう?
兄と話しているとトイレから悲痛なうめき声とともに、何かが水の上に落ちる濁流音が聞こえてきた。
それはもう悲痛なうめき声が聴こえる。それはまるで中世ヨーロッパの拷問でも受けているかのごとく。

 

 

なんだろうと思ってトイレに行ってみると、便器を抱えて座り、さらに便器に顔を突っ込んでいる父を発見した。
こんな父を僕は初めて見た。「情けない」という思いより、「何がおきたんだ?」という疑問の方が強かった。

 

 

「お父さん!大丈夫?

 

 

そう声をかけると、僕らにようやく気づいたのか、父は今にも倒れそうな顔で弱々しく微笑んだ。
今ここで「俺は明日死ぬんだ」と言われても信じるくらい弱々しい。豪快に僕らを釣りに誘った父とは別人のようだ。


そしてその弱々しい笑顔ののままで、とてもか細い声で、

 

 

 

「だ、、、だいじょうぶ、、だ

釣りには、、行くぞ、、、!!

 

 

と遺言のごとく力を振り絞って言葉を吐き出した。言葉を吐き出した次の瞬間にはおろおろとゲロも吐き出していた。

 

父の力強い眼差しとプライドを感じ、「今日は釣りに行くのはやめよう」とは言えなかった。
なので毒状態持ちのままのバグステータスの父と釣りにでかけることになった。

 

 

 

釣りはボートでやることになっていたので、まずは乗り場までいかないといけない。僕と兄が歩く後ろで、父は水を飲みながらなんとか歩いてる感じだった。

当然、会話はなかった。天気は晴天だったのに、僕ら家族の心情は完全に曇天だった。

 

 

しかし、乗り場まで歩いて外の風にあたって落ち着いたのか、父の体調も多少は落ち着いてきたようだ。さっきより父の顔色が良さそうだった。

 

ボートは手漕ぎのものだったので、父が操作することになった。釣り場のポイントまでは多少の時間がかかる。
僕と兄はあまり乗ることのない手漕ぎのボートに、父の体調のことは忘れて楽しんでいた。

 

 

10分ほど漕いで釣りのポイントに着いた。

ようやく釣りが出来ると思い、竿の準備をして、針にエサをつけようとしたところで、またも父が一言もしゃべっていないことに気づいた。

 

 

そして父の顔を見て驚愕した。
みるみるうちに父の顔が、今日の晴天の空と同じように青くなっていく。

 

これはやばい!!
僕と兄は瞬時にそう判断したが、完全にそれは遅かった。

 

 

父が黙ったまま、携帯のバイブ機能がごとく身体が震えはじめたのかと思ったら、目をカッと大きく開いた。

 

そして顔面だけを右に向け、身体を海の方によせマーライオンがごとく海にゲロを吐き出した。
世界一汚い神奈川のマーライオンの誕生の瞬間ですよ。

 

 

もうそれはすごい勢い。身体にあるありとあらゆる悪いものが出ていくくらいすごかった。多分このときの父は「デトックス」って言葉が世界一似合っていた。

 

 

しばらく吐いていたあとに、心配そうに見ていた僕らの方を父は向いた。

 

多分、プライドとかもあったし、僕らを心配させないように色々と考えたのだと思う。僕らを和ませようとしたのかもしれない。

 

とびきりの笑顔で、

 

 

「へへ、、、!
ゲロも魚の良いエサになるんだよ、撒き餌だよ」

 

 

 

と言ってきました。

 

ならねーよ!!!

 

小学4年生ながらに僕は全力で心の中で思いましたよ。漫画であれば2ページの見開きを使ってツッコミをする勢いですよ。


というかもうゲロまみれの場所で釣りしたくねーよ。釣った魚にゲロついてたらどうすんだよ。

 

 

あーあ、なんだよこれ、、、
最悪だ、、、

 

 

父の背中を見て育ったはずの僕らですが、今は兄が父の背中をさすっている。父の背中がこんなに小さく見えるとは。

 

 

背中をさすっている兄も同じように呆れていることだろう、、、



そう思い兄を見てみると、なぜか辛い顔をしていた。僕は悪寒がした。なにやら嫌な予感がするのだ。

 

おそるおそる兄の顔を見ると、父と同じように真っ青になっている。

これは、、、まさか、、、

 

 

これはなんとかしないとまずい。ミイラ取りがミイラになってしまう、、、!

しかし、大海原を漂うボートの上で僕に何ができよう。

 

 


父の背中に手を置いたまま、兄は顔を海にそむけて勢いよく吐き出した。
兄も父と同じようにうめき声をあげた。

 

 

僕に出来ることはただただ一つだけだった。「神奈川の親子マーライオン」の誕生の瞬間を見守ることだけであった。

 

 

「ええいああ、父から、もらいゲロ♪」

 


頭の中で一青窈の名曲がリフレインしていた。なんだよ、この状況。

 

兄にも当然プライドがあっただろう。僕という弟がいる前ではカッコ悪いことはできない。

 

兄も父と同じように、

 

 

 

「俺も魚に撒き餌してやったよ」

 

 

 

と捨てセリフを吐き、息絶えた。
なにこれ、ゲロ吐いたあとに何か言わないといけないの?


いやホントになんだよ、この空間。ボートの上だから助けも呼べないし、逃げられもしない。

  

僕も正常に頭が回らなくなってきた。なんなのだ今日という日は。ボートの周りはゲロだらけ。楽しかった休日の予定はどこにいったのだろう。

 

僕もだんだんと精神的に参ってきた。
刺すような気温の高さ 、鼻をつくすっぱい匂い、船の周りには汚い嘔吐物、父と兄の青い顔、船酔い、、、

 

 

それらすべてを総合するとどうだろう。
答えは一つしかない。

 

 

僕の喉元にひりつくような何かが駆け上がってくるのがわかった。僕は勢いよくすべてを海に吐き出した。

家族3人揃ってのマーライオンである。なんていい神奈川の観光名所になることだろう。名産は「マーライオンの海鮮お好み焼き」で決まりだよ。

 

 

「へへへ、、、
俺も撒き餌しといたぜ、、、!」

 

 

と一応ぼくもマーライオンの慣例にしたがって、捨てセリフを吐いておきましたよ。

 

 

もうね、我慢できるわけないじゃないですか。
兄と父が吐いてる状態で、匂いもキツイし、慣れない船に揺られているし、耐えられるわけがありませんよ。

 

父は酒で吐き、兄はもらいゲロをし、僕は船に酔った。一体こいつらは何をしに海に来たんだ。2度とボートに乗るな。

 

 

 

全員が吐いたからなのか、僕ら家族の間には妙な一体感があった。無言だったが、僕らは汚い口周りをお互いに見合わせて笑っていた。

 

そしてそのまま何もいわずに父が手漕ぎボートを漕ぎ出した。また10分ほどかけて戻らなければならない。

 

 

父は最後まで吐きながらも、なんとかボートを漕いで陸地に戻ることができた。
その姿は途中でかっこ悪いと思っていた父を再びかっこよく見せてくれた。

 

帰りも無言だったが、行きよりも全員が晴れやかな気持ちだった。


家族の形はそれぞれだ。

 


汚くっても良いじゃないか。

 

 

僕らは父の背中を見て育ったし、父の背中を見て一緒にゲロも吐いた。

 


僕らはゲロでつながっている。

 



We are ゲロ家族!!

 

 

 

 

 

 

 

 

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